プロミストランド 〜約束の地〜。
ツアーがスタートして、4本目の会場は、富士山までの直線距離が、
約900Kmほどある北の大地北海道のニトリ文化ホール。
3月17日、まだ、街の中には、雪も残り日中の気温も10℃まで到達しない冬模様。
開場すると、約3年ぶりのライブを待ち望んでいた長渕ファンでみるみる客席が埋まってゆく。
熱い友情で結ばれている様に見える男友達、とても仲睦まじいカップル、お揃いのTシャツで揃えた女の子のグループ、
お揃いのタオルを肩にかけた親子、それぞれが、それぞれの思いを胸に秘めて、間もなく始まるステージを待ちわびている。
開演予定時刻の19時が近づくと、場内の熱気が、どんどん上昇してゆくのを感じる。
あちこちで沸き起こる手拍子、そして、力強いツヨシコール、観客全員が、早く会いたいという気持ちで、ステージを見つめている。
19時10分、観客のボルテージがピークを越えた様に感じた瞬間、全ての明かりが落ちて本日のロックンロールショーの幕が開いた。
全員総立ちで拳を突き上げて、長渕との再会を歓喜している。全員が、キラキラした瞳で、
ステージ上の一挙手一投足を心のファインダーに焼き付けている。
1曲目がスタートしてステージ上から放たれる重厚なバンドサウンドを従えた、
長渕の魂の叫びの力強い歌声が、観客を圧倒するが、すぐさま、それを受け止め歓声となってステージにぶつける。
すでに、ステージ上と客席が一体となっている。凄い熱量を感じる。とても、ライブがスタートしたばかりとは思えない光景だ。
「札幌まで来たぞ!外はちょっと寒いけど、この会場の中は、思いっきり燃えているよ。
会いたくて、会いたくて、会いたくて、此処に今、立ってます。」
この言葉を聞いた観客が、さらにヒートアップ。その後も、
「さっぽろー!!」「さっぽろ最高だぞー!!」「さっぽろのみんなとぶちかますうだよな‼︎」と何度も、この街の名前を叫んでくれた。
その都度、喜びを爆発させるオーディエンス。
アコースティックギター1本のパートでは、「今日は、めちゃくちゃ指が動きまっせ」と語り、
とても懐かしいナンバーを奏でると、会場全員で大合唱。長渕と札幌のオーディエンスが、
ここまで築き上げた信頼を証明する瞬間が、ここにある。
アコースティックギターのとても暖かい音色で、会場を包み込んでの優しい時間から、
一転して、重厚なロックンロールサンドが、再び会場に響き渡る。このレンジの広さとコントラストに圧倒される。
どっちも長渕剛なんだ。あっと言う間に本編のラストソング、
1曲目からラストまで、観客のボルテージは、トップギアをキープしたままだった。
「サンキュー 札幌!!」この言葉で、本編は終了した。
そして、アンコールに突入。圧巻は、約15分近くにまで及んだ、
このツアースタートの2日前に完成した新曲「富士の国」だった。
信頼という絆で結ばれた10万人と一緒にオールナイトを完走して、
目撃するであろう富士山の朝日を連想させる様なシャープな赤いライティングが、とても綺麗だ。
国旗が生まれた 日本の頂(テッペン)に陽よ昇れ!
霊峰富士の国の頂に 俺たちは生まれてきたんだ
札幌の観客が、初めて耳にする新曲の歌い出し、1語1語を噛みしめる様に聞き入っている。
それぞれが、約束の地、富士山に思いを馳せ、8月22日をイメージしている様に感じ取れた。
そして、気が付けば、天に向かって拳を突き上げ、皆んなが叫んでいる。
音楽の力をまざまざと見せつけられた瞬間だ。日本を元気にさせよう。
皆んなが幸せになれるよう。音楽のチカラで時代を変革させよう。
今の長渕剛のリアルを感じるこの壮大な楽曲に込められた決意。信じることができるのは、ロックンロール。
北の大地、北海道から、プロミストランド富士に向かって、1本の真っ直ぐな太い道が開通した瞬間だ。
ライブは、一期一会である。この瞬間を共有できた札幌のオーディエンスは、きっと多幸感に溢れていたに違いない。
あっという間に2時間20分が経過した。札幌の熱い夜。眩しい時間だった。
旅はまだまだ続く、ROAD TO FUJI
(文:EMI Records : 飯島覚)